Life is journey 〜時の地図と共に旅を行く〜 2015.04

Life is journey 〜時の地図と共に旅を行く〜

今年は44日に京都で満開の桜を楽しみ、翌週末の411日は長野県の高遠でこれまた満開のしだれ桜を楽しみました。昨年の5月に北海道を訪ねた時は、蝦夷山桜が咲き乱れていました。桜の開花日は地域によって違うので、当然ながらお花見やそれにちなんだお祭りの時期も地域ごとに違うし、人の賑わう時期も違っています。春の旅を通じてしみじみと、地域ごとの文化風習の違い、その多様さを感じます。
先日訪ねた静岡では多くの地域で途絶えてしまった地方暦のひとつ「三島暦」を守る取り組みが続いています。守るとは書いたものの、実際は現在の暮らしの中で身の回りの自然の変化や農業、漁業、伝統産業の有り様を観察、記録して新しい三島暦を作っていると言ってもいいと思います。
このような暦を見れば、旅人もその地域で今何が行われているのかを知ることができます。いわば「時の地図」のようなものですね。
僕は全国各地で暦のワークショップを続けていますが、その目的は「伝えること」ではなく、その先にある「みんなで協力し合って、自分たちの暦を作っていくこと」にあります。
現代社会の中では、近所の畑や田んぼや港で何がいつ収穫されるのかを知らないで暮らしている事が多いように思います。しかし、都会に暮らしながらでも、このような暦を通じて自然のリズムや本当の旬を知っていけば、畑や田んぼや海でいつ何が起こってるのかを知るようになり、そのことが自然のリズムに合わせた暮らしを取り戻すきっかけになるかもしれません。
それはたとえば「来週の満月はひじきがたくさん採れるだろうから献立はひじきご飯にしよう」とか「あそこの農家さんはこの時期は忙しいだろうから手伝いにいこう」とか、もっと現代的に言えばイベントやマルシェを開くお日柄を決めたり、味噌作りや染物をする時期を決める上で、こちらの都合ではなく自然の都合を伺っていくということだったりします。
日本古来から使われてきた暦の中に「七十二候」というものがあります。これは、およそ5日ごとの季節の変化を簡単な言葉で書き綴ったもので、昔は各地の七十二候があったといいます。現存する七十二候の中でも有名なものは京都あたりの様子を記したもので、たとえば西暦4月25日は「霜止んで、苗がよく育つ」51日は「牡丹の花、咲き始める」56日は「蛙、鳴き始める」といった言葉が並んでいます。これらが実際の出来事と当たっているか当たっていないかは、当然地域によっても年によっても違います。七十二候は未来を言い当てようとしているのではなく「今まで観察してたら大体この頃こんな感じだったよ」ということを伝えてくれるものです。七十二候のひとつひとつの言葉が、空に目をやったり、花の香りに誘われたり、鳴き声に耳を澄ませたりと、自身の五感を開いて時を感じるためのきっかけを与えてくれています。

このように五感を開いて、時を味わいながら旅路を歩むことで、その旅はさらに豊かなものになるような気がします。予備知識や先入観にとらわれず、時計や西暦を傍らに置きながら、五感が感じる時の導きを味わいながら進む旅。人生という旅路においても、そのようであれたらと思います。