Life is Journey ~旅と物語~ 2015.06

Life is Journey ~旅と物語~

2006年にできたドキュメンタリー映画「六ケ所村ラプソディー」を持って全国を回るようになってから、ほぼ同じようなペースで9年間全国を旅している。
僕はこの5月で39歳になったので、30代はほぼ旅をしながら過ごしていたことになる。改めて考えると、なんとも不思議な人生だ。この旅はワークショップやイベントや政治活動などが中心となったものなので「仕事の旅」と言う事もできるが、各地の自然や暮らしの営みに直接触れたり関わったりしていく「見聞の旅」でもあったと思う。その二つの旅がそれぞれ形を変え、少しずつ融合していく中で生まれたのが「冨貴工房」でもあったのかな、と思う。
2007年に上述の映画上映ツアーをきっかけに出会った佐賀の山奥で自然農を営む家族から大豆を仕入れ、町田で江戸時代から続いている糀屋から糀を仕入れ、工房で味噌を仕込む。先日は同じく味噌作りの時に使っている「海の子」という塩を作っている長崎県平戸の「塩炊き屋」を訪ね、自給をテーマに語らう座談会に参加してきた。海岸沿いに塩を汲み上げるヤグラや塩炊き場を建て、生活に必要なものをなるべく自分で作る暮らし。火を囲んだりしながら夜な夜な語らい、その場の雰囲気や暮らしのあり方や言葉のひとつひとつに大きく頷いたし、学びも発見もたくさんもらった。大豆や糀や塩が作られている場所、作っている人、彼らの営みや考え方や世界観を肌で感じる。そして味噌を仕込む時に、大豆、糀、塩がどこでどのように作られてここにやってきたのかという物語を共有する。佐賀の農家と町田の糀屋と平戸の塩炊き屋と自分たちの暮らしが繋がっていく。
以下は2004年の夏至、富士山の麓で出会ったマオリ族の男性が語ってくれた言葉。
「マオリ族は自己紹介の最初に自分を守ってくれている山や海、野原や川の事を紹介し、そのあとに家族を紹介し、最後に自分自身の事を紹介する。自分を知るには、自分を生かしてくれているものを知ることだ。お前を生かしてくれているそれらのものたちは、お前が何によって生かされているかを忘れていようとも、変わらずお前を生かしてくれている。しかし、お前がもし自分を生かしてくれているものたちに意識を向け、それらのことを知ろうとすればするほど、それらとのつながりは深いものとなり、いつかそれらのものと自分とが一体であることを実感できるだろう。」
塩や大豆や糀や麻布や胡麻や木べらや鉄鍋や、電気や水や風や光。自分たちが営む暮らしの中にやってくる様々なものたち。それらがやってくる流れを辿るように旅をして、旅の見聞を暮らしの中で分かち合う。そんな、営みと営みをつなぐ語り部のような旅人が増えていると思う。そして、小さなカフェや工房やシェアハウスやコミュニティスペースやマルシェやワークショップが増えることで、ひとつひとつのものや人が持っている物語を分かち合う場も増えている。

僕たちの生活を支える食べ物や衣服や道具やエネルギーには、それぞれオリジナルの物語が宿っている。それらの物語に耳を傾け、そして語りついでいく。その度に世界観が塗り替えられ、自ずと新しい物語が立ち現れてくる。日々出会うすべての旅、すべての物語を祝い慈しみたい。