Life is journey 〜土から生まれ、土に還る〜 2016.08

Life is journey . -土から生まれ、土に還る-


8月といえば原爆投下、終戦、お盆、「死」というものに意識が向く季節でもあります。人生という旅の中で必ず訪れる死。地球が生まれてから46億年の間に生まれたすべての命が今も生きたままだったら、今頃この地球は命でぎゅうぎゅうだったでしょう。死があるから命が循環する。日本人の思想、生活の土台になっていた陰陽五行思想によると宇宙を構成する五つの要素「木・火・土・金・水」のうち「土」は世界の中心であり、世界そのものでもあると捉えられています。一日という循環は「朝・昼・夕・夜」、一年という循環は「春・夏・秋・冬」というように四つの表情を見せながら巡っていきます。そしてその循環を促す力が「土」です。生き物は死んだら土に帰ります。重力にあらがって立ち、伸び、動いていた命は、死して土に伏し、虫や微生物によって分解され、土になっていきます。そして命は再び土から生まれ、立ち上がり、土のエネルギーを取り入れながら伸び、動きます。命は死んだら土に帰り、土から生まれるという考えから、季節を終わらせ、次の季節を生み出す時期を”土旺用事”と呼び、後の時代に”土用”と略されるようになりました。

夏の終わりの土用は、今でいう7月19日頃~8月6日頃。土用というと、丑の日にうなぎを食べるという風習が有名ですが、実際は年4回あるそれぞれの季節の節目ごとに約18日ずつ、計約72日間が土用にあたります。その中でもとりわけ夏の終わりの土用(夏の土用)が有名なのは、この頃が暑さのピークであり、湿気のピークでもあるからです。この時期からエネルギーが減退し、潤いも減っていきます。”極まれば転ずる”という言葉のとおり、一年の大きな折り返しです。その事を深く認識するために、土用丑の養生や夏越の祓え、お中元といった風習や儀式がこの時期に集中しています。土用丑の日はもともと、「う」の字のつくものを食べる日でした。梅干し、瓜、うどん、そしてうなぎなどです。これらは体にこもる熱を取ったり、胃腸を整えたり、精をつけたりと、いわゆる「夏バテ」「暑気あたり」といった季節の変わり目の体調不良を防ぐための養生食です。夏越の祓えは旧暦の6番目の月である「水無月」の最終日までに行うお清めで「上半期のケガレを祓う」という意味があり、これも一年の折り返しを意識した風習です。お中元は、今で言うお盆と同義です。もともとお盆という言葉は「盂蘭盆(うらぼんえ)」という言葉から来ており、さらにその語源はサンスクリットの「ウランバナ」という仏教語です。この言葉には、死者や先祖の苦しみを取り除くための供養という意味が込められています。「盆と正月が一緒にやってくる」という言葉がありますが、正月というのはもともと、お盆のちょうど半年前(または半年後)である冬の終わり、春の始まりの時期にあたります。そして正月は春を迎える、来る一年を祝う行事です。一年の始まりである正月の元日に、来る命を迎え、祝う。一年の折り返しである中元に、去りゆく命を送り、祈る。自然界の循環の節目に意識を合わせ、様々な風習、行事をとりおこなってきた日本人の思想の中には「私たちの意識のあり方や生活のあり方が、自然界のめぐりに大きく影響を及ぼしている」という深い自覚があります。季節の節目に集い、祝い、祈り、歌い、踊る。もし今が文明の、歴史の、節目のような時期なのだとしたら、去りゆく命、来る命への祈りと祝いを大切にしていきたい。そんなことを思いながら夏の土用を過ごしていました。あたらしい秋を祝い迎えましょう。